社会が行き先を見失ったこの時代。
「自分探し」の先にあるものとは。
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 | - 速水 健朗
- 発売日 : 2008/02/16
- 出版社/メーカー : ソフトバンククリエイティブ
- おすすめ度 :
(20 reviews)
対案なき批判は空虚である。
現代人の自意識過剰
社会勉強
「自分探し」の落とし穴に転落しかかっているあなたへ
自分探し真っ最中の人には理解できないかもしれないけど
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点数★★★
難度★★★
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【要約・エッセンス・あらすじ】(amazon 内容紹介より)
自分探しの罠にはまらないための道を探る!
自己啓発や自己分析でかえって己を見失ってしまう若者や、自分を探しに世界へまで飛び出してしまう夢追い人など“自分探し”は日本中に蔓延している。
中田英寿から「あいのり」まで幅広い分野での自分探しを分析し、その実態を探り出す。
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【目次】(★はおすすめ)
まえがき
第1章 世界に飛び出す日本の自分探し
第2章 フリーターの自分探し
第3章 自分探しが食い物にされる社会
第4章 なぜ自分探しは止まらないのか ★
あとがき
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【要約・エッセンス】
「自分探し」という言葉はかつてはネガティブなニュアンスを持って使われることの多い言葉だった。
だが、今はその言葉に肯定が与えられている。
「自分探し」のために海外に飛び出す理由の一つは変身願望だが、その次に上げられるのは「信仰」だろう。
ここでの信仰、もしくは宗教とは必ずしも教団組織が存在し、それに所属するという形を取るとは限らない。
むしろ、教団組織も経典も存在せず、商品として流通して消費されていく一般消費財としての信仰の方が主流になっている。
社会全体が「やりたいこと」「自分らしさ」を求める構造になっている。
このような世界において若者が3年で辞めるのは仕事が辛いからではない。
やってみた仕事が「やりたいことではない」「自分らしさが出ない」から辞めるのだ。
それは甘えではなく価値観の変化だ。
「やりたいこと」が重要視されるようになったのは、日本経済の崩壊によってこれまでの終身雇用神話が崩れ去り、明確な目標設計を社会の側が提示できなくなったから。
しかし、仕事におけるやりがいや自負心はマニュアル化やIT化によって奪われている。
頼るべき宗教や会社を失った現代においては、自分の生きる道は自己責任のうえで選び取っていかなくてはならない。
しかし、多くの人間にとって自己選択と自己責任が要求される現代は生き難いものであり、そうした現代社会に対応できなくなった個人があふれているのが、「自分探し」がとまらない現代の姿なのだ。
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【レビュー】
「やりたいこと」「自己啓発」を冷やかに皮肉った本書。
「自分」とは内在するものなのか、それともなんらかの外部においての経験を通して初めて発見できるものなのか。
いずれにせよ「自分探し」とは選択の放棄であると著者は述べています。
しかし、その「自分探し」に行動が伴ってさえいれば良いのではないでしょうか。
たしかに「自分」とはどこを探しても存在しているものではないですし、それを求めることが単なるモラトリアムの延長になっている状況は危険だとは思いますが、自己をなんらかの形で規定しようとすること自体は否定するべきことではないと感じます。
たしかに著者が書いているように、「自分」というものは海外に「外こもり」すれば無条件に見つかるものではないと思うのですが、そういった環境の変化によって自分の新たな一面に気付く可能性は大いにある。
ですが、「自分探し」は甘えであるという著者の主張にも納得はでき、また、それを許してしまう経済の先行きは見えないにも関わらず豊かである、という現代日本の歪みを突きつけられます。
引用部分が多く、著者が結局なにが言いたかったのか分からなかった部分が散見されたためこの点数。
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